名は体を現す清遊湖
柏市の清遊湖は面積約5000坪、収容人数450人の大型の管理釣り場。周囲は木々に囲まれて自然の興趣豊かで、水深も各種あり、多彩な釣り方が楽しめる。清々しい環境でゆったりとした気分で一日を遊べる。そんな名を体で現す清遊湖の沿革をたどってみよう。
時を十年余さかのぼる。
2011年7月18日。海の日に当たるこの日の清遊湖は「貸し切り」で、大きなイベントが開かれていた。清遊湖の創業者、渡辺重雄をしのぶ会だった。この釣り場に集う釣り人有志が付き合いのあった重雄への追慕が止まず、重雄の遺族を動かして、開催に行きついた。おごそかながらも和気あいあいとした雰囲気でしのぶ会は続いた。日参する常連の釣り師やここで例会を開く多くの会の代表ら約300人が集まった。食事はもちろん、ヘラブナ釣りをしながら、故人の思い出を語り合った。妻の淑江は夫の遺言で、「家族葬」を済ませていた。内密にしたまま続けてもいけず、数人に相談した。みんなで送ろうよ、としのぶ会を持ちかけられた。
重雄は昭和19年生まれで成田市の出身。親兄弟と宝石商をしていたが、多趣味で、ゴルフとヘラブナ釣りに興じていた。柏市内のゴルフ場へ出入りしているうちに、ゴルフ場で働いていた地元の人から、釣り場になりそうな「いい土地」のことを聞きつけ、買った。両親、妻の淑江ら一族全員の反対を押し切って、重雄は突っ走る。「やると決めたらやる、という一途な人で、周囲の反対を押し切ったのです」と淑江。
重雄は神奈川県の芦ノ湖で大型のへらブナを釣るのが好きだった。芦ノ湖のイメージを描きながら、重雄は森を切り拓いて、ユンボで土を掘って池を作った。試行錯誤の毎日で、最初に放流した65トンのヘラブナを死なせてしまったこともあった。だが、前のめりで一途な重雄は止まらない。大型のヘラブナの放流を重ね、幅広い釣り人に対応する釣り場の工夫にも心を砕き、清遊湖はあっという間に関東では有名な管理釣り池になっていった。淑江は言う。「夫は好きだった芦ノ湖の雰囲気を残し、自然に囲まれた釣り場を作りたかったのです。そういう雰囲気を感じていただければ幸いです」